松本竣介
「素描」
1943年10月

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松本竣介(1912-1948)は昭和前期の近代洋画史に一種独特の足跡を遺した画家でした。新しい時代の絵画を標榜しつつも、過激なだけの前衛性や画壇での政治的栄達には背を向け、あくまでも個としての自由を貫きとおした凛然たる表現者であったともいえるでしょう。戦時下、都会の一隅にあって時代の生活者としての現実を極めて冷静に見つめながら、同時に絵画に自らの生死を賭けて彼はわずか36歳という若さで病に倒れ天逝してしまいました。しかし、その厳しくも清廉なる画家精神は作品の中に今なお生きづいており、多くの人々を魅了し続けています。

少年時代を過ごした盛岡で13歳の時に聴覚を失ってのち、画家になる決意を固めた竣介は1929年に上京、以後約20年間が、短いながらも起伏に富んだ竣介の画業となりました。

竣介は障害故に戦争に参加できないことで自責の念に駆られていたともいいます。彼はそんな自分に対するもどかしさや苦しさ、孤独、戦争の虚しさや悲しさ、命の重さといったものを自分の内なる声として描き続けてきたのではないでしょうか。

この作品は画家31歳の時に、次男の莞を描いた作品です。時に危なっかしくもある子供の無垢な純粋さが顔の表情によく表れています。